2009/05/04
信託の本質
相続対策の3つの要素は、節税対策、財源対策、もめない対策。
すべての相続財産が預貯金ならば、民法どおりで問題は生じない。
自社株式、固定資産など分割しにくい財産の場合、揉めるケースが噴出する。
解決できるのはたった一人。
財産を築いた本人、分ける人が決める。
死ぬ前までに決めておかねばならぬ。
(揉める実際のケース)
会社の株式がすでに他の兄弟に分散されており、その時点で経営権の集中を図る必要があった事例。
そして、相続が起こり、他の相続人から株式の買取を請求されて、事業承継が失敗した。
しかも、長男である後継者に実子がいない状況で、妻の実家から養子をもらう。
ということは、後継者が亡くなったとき妻の家に財産が移動する。
後日、その請求権を行使した次男の方に聞いた。
なぜ、事業承継が失敗することを知って、自社株式の買取請求をしたのですか。
上場会社の役員を務めるその紳士はこう語ったという。
「兄貴が死んだらどうなりますか。
相続人の養子が引き継ぐことになります。
我慢なりません。」
相続財産が別の家系に移動する場合、相続紛争が起こる場合がある。
こういう場合、跡継ぎ遺贈受益者連続信託と呼称される信託の活用が考えられる。
現在、信託の可能性につき、中小企業庁が各界の専門家を集めて研究している。
信託を活用した中小企業の事業承継円滑化に関する研究会における中間整理について~信託を活用した中小企業の事業承継の円滑化に向けて~
信託活用事業承継.pdf
信託の本質とは、分けられない自社株式や固定資産のような財産を分割可能な債権に転換すること。
自社株式を信託財産として、後継者たる長男の相続後は、その養子ではなく、次男の子供に相続させるような信託の設定が可能である。
このような信託の設定であれば、両親の築いた財産が他の家系に流出することを防ぐことができる。
たとえば、こんな事例にも活用することができる。
会社の代表者が、先妻と死別し、別のかたと再婚をしたい。
先妻の子供は、相続がややこしくなるので、その結婚は許さない。
後妻が亡くなったとき、その子供に自社株式が渡るからだ。
この信託を活用すれば、元の家系にもどる方法を選択できる。
自社株だけでなく、固定資産の賃貸料を信託受益権とする場合も検討でき、信託の可能性につき考えてみる。
ただ、税金を軽減したい方向と円満解決する方向は真逆となる場合がある。
今回のケースのほとんどが「みなし遺贈」となる可能性がある。
相続税の課税の対象となれば、税務上のメリットはないことに留意されたい。
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