2009/05/07
杏っ子
室生犀星の「杏っ子」を読む。
犀星の自伝と言われている小説。
この小説は、私生児として生まれ、生後まもなく養子に出された平山平四郎という作家の人生を描いている。
犀星は、恵まれぬ幼少時代を描きながら、産みの母親を求め続けている。
「ただ、このような物語を書いているあいだだけ、お会いすることが出来ていた。(中略)物語をつづるということで、生ける母親に会うことのできるのは、これは有難いことのなかの特に光った有難さなのである」。(24頁、引用)
かの有名な詩「小景異情」のなかで、ふるさとは遠きにありて思ふものと詠んだ故郷金沢に対する複雑な思いを少しだけ理解できた気がした。
[小景異情 その二]
ふるさとは遠きにありて思ふもの
そして悲しくうたふもの
よしや
うらぶれて異土の乞食となるとても
帰るところにあるまじや
ひとり都のゆふぐれに
ふるさとおもひ涙ぐむ
そのこころもて
遠きみやこにかへらばや
遠きみやこにかへらばや
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