2009/08/17
大手銀行の不良債権と税効果会計
大手銀行は、税効果会計制度で救済されたことは会計業界では夙に有名だ。
2000年頃、メガバンクは税効果会計を先駆けで導入した。
現状も増加し続けているが、銀行は多額の不良債権を抱えている。
金融庁の指導により、貸し出しの相手先が破綻する可能性が高くなると、貸出額の80%ほどを引当する必要が生ずる。
しかし、税務当局は、この引当金をすぐに税務上の損金とは認めず、実際にこの貸出先が破綻した際に損金として認める。
つまり、財務会計上は費用となるが、税務上は損金として計上されない「有税償却」が多い。
例えば、100億円貸している取引先が破綻懸念に陥り、金融庁のガイドラインに従って、80億円の引当金を計上することとなる。
法人税率が40%と仮定すると、仮にこの80億円が全額損金計上されると、32億円の法人税が節税できる。
しかし、税務当局はその破綻先が実際に破綻するまで、80億円を損金としては認めない。
そこで、適正な期間損益計算のため、32億円分の法人税等調整額を計上して、利益を上乗せし、税引後の当期利益を計上する。
さらに同額の繰延税金資産が貸借対照表上の資産の部に計上される。
(借方)繰延税金資産 32億円(貸方)法人税等調整額 32億円
将来戻ってくる予定の税額を利益の上乗せとして先取りして、資本増加させている。
この繰延税金資産は、将来の税金が安くなる、もしくは戻ってくる権利だから、将来32億円という現金が入っていくくる可能性がある。
その将来の可能性を見越して純資産の部(株主資本)を32億円増加させている。
結果として、銀行の自己資本比率を上昇させている、。
言い換えれば、税効果会計は、銀行の自己資本比率の上昇を助け、「銀行救済会計」と呼称される所以となった。。。
ここらへんから、税効果会計により増加した分を自己資本に組み込むのは如何なものかと議論が白熱しているのだ。
【参考文献】
会計と財務の本質 (実践!知の挑戦者に贈る究極のバイブルシリーズ―アカウンティング・ファイナンス編)
- 作者: 小宮 一慶
- 出版社/メーカー: ビジネス社
- 発売日: 2003/10
- メディア: 単行本
3メガ、自己資本比率上昇、6月末、厳格基準達成にメド。
(2009/08/15,日本経済新聞 朝刊, 4頁)
三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)、みずほFG、三井住友FGは14日、2009年6月末の連結自己資本比率を公表した。
3メガバンクそろって11~13%程度と、自己資本比率規制の最低ラインである8%を上回った。
一方、国際的に関心が高まりつつある自己資本比率のより厳格な基準も、市場が重視する4%の達成にめどがついた。
(後略)
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