2009/11/16
バンカーの視点~経営者に告ぐ! 粉飾決算は無駄な抵抗と知るべし
(銀行の現状)
鳩内閣の亀さんが、金融機関の努力義務とはいえ、貸付金の条件変更を努めよと時限立法を制定する。
金融機関は、上記のような国内の見えない圧力とともに、バーセルなんとかというややこしい自己資本比率をクリアするため、今後、三菱UFJのような大型増資を連発するだろう。
(サラリーマンの悲哀)
先日、ある金融機関の方から、本音を聞いた。
銀行は、金融庁のお達しがすべてならば、銀行員は、上司がすべて。
サラリーマンの生態系そのものではあるが、ここら辺は一般の職種よりも官僚に近いものを感ずる。
みなさんに想像していただきたい。
貸付金の条件を変更を仮に依頼した際、お世話になっている銀行員の方が、悲しそうな目をしていることを。
その目の奥には、出世に響くとの内心を押し殺しながら、お客様のためにはリスケがベストと自らを鼓舞しているのだ。
銀行マン(バンカー)は、この強烈な減点主義と日々戦っている。
自らの進退を防御するため、彼らは何をするか。
視点は二つしかない。
(経営計画の視点)
銀行の求める経営計画は、「合理的かつ実現性の高い抜本的な計画」。
簡略に言うならば、実抜(じつばつ)計画。
その計画を凝視して、①返済可能か ②倒産しないか、この二点しか見ない。
銀行員は、支店長を経由して、融資審査部に稟議書をあげる。
後日、仮にリスケが生じた場合、その稟議書は、減点の資料となり下がってしまう。
もう一度繰り返そう。融資担当者は、強烈な減点主義にさらされている。
(粉飾決算は無駄)
経営者の皆様には、粉飾決算して、銀行借り入れをしている方がいるかもしれない。
ここで、融資担当者の方がどんな作業をしているか理解できれば、その粉飾決算は無駄だと悟るだろう。
一流大学を卒業した彼らは、多数のお客様、データベース、経験をフルに活かして、そんな誤魔化しなどいとも簡単に見抜いてしまう。
はっきり、繰り返して言おう。粉飾は無駄だ。
ある日の融資担当者の行動を振り返ってみよう。
銀行に帰り、パソコンを開く。
経営者の方から頂いた決算書を何期分かそのままエクセルへ入力する。
損益計算書が赤字か黒字か関係ない。
銀行員の命の次に大事な貸付金が返済頂けるか、倒産しないかが重要だ。
エクセル入力が完了して、そのシートをそのまま、コピーする。
そして、そのシート名をこう名称変更する。
修正貸借対照表、損益計算書。
たとえば、銀行から見て変動しない流動資産(仮払金、立替金など)は資産価値なしと判断し、気持ちの良いくらいに、ゼロ評価し、あっという間に債務超過となる。
また、役員貸付金は自己株式と同じ取扱で、減資とみなされる。
もちろん、減価償却不足もきちんと修正される。
そんな感じで、どんどん修正していく。
むりやり黒字で決算書を作成しても、貸借対照表に跡が必ず残る。
きちんとした説明がない限り、長期間変動しない項目は、容赦なく切り捨てていく。
(貸付方針の決定プロセス)
経営計画書も5カ年計画くらいになると、経営者の気合が売上増加という形で乗り移り、増収増益の立派な計画となっている。
銀行員は、修正損益計画と名称変更し、売上80%の場合などして笑顔を絶やさず、冷徹に判断している。
ここで、銀行の貸付方針意思決定のプロセスを見ていこう。
まず、ばっちり保守的に評価した決算書で格付をする。
この格付を材料に、金融機関は必ず、最低1年間は変更しない貸付方針
を決定する。
例えば、「この会社は地域経済にとっては必要不可欠な存在であり、経営者も信用がある。したがって、当行も引き続き支援させていただく。」
あの経営者ならば、信頼が置ける。
こう金融機関が判断していただくには、決算書や経営計画書の説明を担当者や支店長に丁寧に説明するしかない。
稟議書の向こうの審査部長には、経営者のあの温厚な顔は見えない。
ペーパーでは決して経営者の熱いハート、人に対する温もりなど伝わらない。
眼前の方と目を合わせなければ、なぜ、起業したのか、お客様やスタッフへの溢れんばかりの思いは伝わらない。
審査部へ紙だけの伝達では、当然、貸付方針も淡泊になるだろう。
逆に、信頼を失う行為は何か。
真実を後日知ることである。
商売の基本は、信用ならば、粉飾はできない。
職業会計人として、お客様の決算書が嘘が嘘で塗り固められていくのを見逃すわけにはいかない。
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