2011/02/28
資本的貸出の本質
4.資本的貸出について
(1)税金の考えは金利にも影響する
中小企業の資本金は過小であり、資金調達の多くは、金融機関に頼らざるを得ません。
節税志向の会社は、法人税を払わないことに血道をあげていますから自己資本もそんなに多くはありません。
したがって、自己資本が少ない場合、金融機関の格付けも低く、支払利息を多く払うことになります。
健全志向の会社は、稼いだ利益から法人税を支払った残りを内部留保として自己資本を厚くしているので、概して格付けは高く金利も低いです。
税金の考え方が、金利に影響し、金融機関へ払う利息の多寡にも波及します。
(2)挑戦支援資本強化制度
日本政策金融公庫が行う資本金貸出の制度を御存知でしょうか。
金融機関の貸出を負債ではなく資本と考える制度です。
金融機関から出資を頂くという考え方に近く、基本的に15年の期限一括償還で、貸付後1年ごとに、直近決算の成功度合いに応じて、9.95%、5.60%、0.40%の3区分の利率が適用されます。
9.95%と金利は高くなっていますが、これは1割配当という考えで、業績が悪くなれば、徐々に金利は低くなっていきます。
文章が間違っているわけではなく、業績が悪ければ配当率が悪くなるのと同じ理屈で、業績が悪ければ、0.40%の金利まで下がります。
詳細はこちらから。
http://www.c.jfc.go.jp/jpn/search/57.html
(3)権利には義務がある
金融円滑化法では、金融機関は、上記のような資本的貸出も指導せよと書いてあります。
ここまで読んで頂いた方は、こんなうまい制度があれば、是非活用したいと思いますでしょう。
金融機関には上場会社もありますし、上場していなくても上場会社並みの内部統制がばっちり構築されています。
出資する会社には、どんなリスクがあるか徹底したリサーチが必要です。粉飾しているような会社に万が一でも貸しつけた場合、株主や金融庁から何を言われるかわかりません。
山のような資料を金融機関に提出しなければ、資本的貸出は無理でしょう。このような資本的貸出だけでなく、1年以上の元本返済猶予においても、同様のことが言えます。
1年以内の返済猶予ならば、資金繰り表の提出でキャッシュフローがわかります。
しかしながら、1年以上の経営状態を説明せよとなると、将来のキャッシュフローを保証する資料を提出しなくてはならないのです。
一方、金融機関の立場はどうでしょう。
日本政策金融公庫の資本的貸出に一時的に振り替えた場合(これを専門用語でDDSと言います)、自社の貸出が減り、不利なのではと疑問が生じます。
金融機関の貸出残高、例えば5千万円は減少しますが、この資本貸出は資本とみなされますから、格付けが上がり、新たな信用貸出、たとえば1億円を貸し出せることになり、良い結果を生むことになります。
(おわり)
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