2017/09/17
パブリックセクターの会計とは
過日(9月4日、月曜日)、宮本周司参議院議員とランチをしながら、中小企業支援について情報交換しました。(写真)
さて、京都大学EMBA講座も5回目が終了し、いよいよコンサルティング・レポートの準備にとりかかります。
第5回目は、パブリックセクターの会計について、学習しました。
(1)利益に替わる尺度~アウトカム
パブリックセクターと民間企業との違いとして、警察署、税務署などは公権力の行使を伴っている。特殊法人化改革にて強制的に独立行政法人化された。
パブリックセクターには民間の成果指標である利益という業績尺度がない。民間の組織の統制や戦略立案にとって、利益は単一で網羅的である尺度である。
中期計画の必要性は、ヴィジョン実現のためである。パブリックセクターには、社会貢献という使命がある。したがって、利益ではなく成果を指標とする。信頼の構築、サービス要請、人材育成という時間のかかる先行投資により、ミッション(大義)を実現する。そして、ミッションがどれだけ実現しているかという指標がアウトカム(成果)である。アウトプットは単なる業績結果である。アウトプットからアウトカムに至る中間指標を中間アウトカム指標という。
(2)最終アウトカムに至るロジックモデルの警察の例
インプットからアウトプット、中間アウトカムから最終アウトカムに至る道程を警察による地域住民への安全講習の例で見てみよう。ロジックモデルを活用して、適切な最終アウトカムを設定する。なお、日本の最終アウトカムはアウトプットに近く、数が多い。優先目標を設定すべきであろう。
警察による安全講習の開催(開催回数)⇒地域住民の講習参加(参加者数)
⇒地域住民による犯罪情報の提供(情報提供件数)
⇒提供された犯罪情報による解決(情報によって解決された犯罪件数)
⇒犯罪の減少(地区の犯罪件数)
⇒地域住民が以前よりも安全と感じる住民の役割。アンケートによる安全と感じる住民の割合(最終アウトカム)
(3)アウトカムと予算との関連付け
アウトカムをテコにしてインプット(予算)を結びつけたい。しかし、インプットは、支出統制であり、アウトカムの世界とは異なる。基本的にインプットとアウトカムの因果関係はない。
偉大なサービス業であるパブリックセクターは、人がすべてである。人にかかる活動が多いので、事務量に着目する。規制改革の前から、国税庁の職員は、どの仕事に何時間投入したか日報に記録している。職員が外部調査、公平な税務行政に時間をより投入するため、内部業務を減少していく。単に事務を減らすのではなく、職員の価値観や戦略に合うように、事務を効率化していく。現場の改善提案を期待する。
(4)非財務のアウトカムの設定~単位置き換えの仮説
アウトカムの中期計画の立案作成するに当たり、ミッションを実現するために、アウトカムの業績をどのように測定するか。インプットとアウトカムをいかに関連づけるか。
非財務の中間アウトカムとして、「ありがとう」という単位を設定する。以下、「ありがとう」の単位をTHと置き換えるという仮説を検証する。
3つの会計公準の中で、「貨幣評価の公準」がある。円単位から「TH」という単位へ置き換えるという仮説を立てる。「TH」という統一単位へと置き換えることができれば、民間企業のツールを活用できる。例えば、計画発表会で目標を共有できる。また、円単位の予算コントロールと対比するならば、TH単位のサンクスコントロールとして計画に反映できる。
国民の幸福度をTHで測る。経済学の貨幣論の議論へ。ただし、「ありがとう」とお金の違いは、「ありがとう」は放置しても増えないということ。お金であれば、複利で増え続ける。
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