2020/05/10
経営セーフティ共済の活用 2020
1.転ばぬ先の杖としての共済
日本経済はこれまで何度か経済危機に直面し、その度、中小企業は倒産の憂き目にあってきました。1973年(昭和48年)のオイルショックを契機に倒産が増えた経緯もあり、1977年(昭和52年)に中小企業倒産防止共済法が施行されました。この法律に則り、翌年(昭和53年)、中小企業倒産防止共済制度(経営セーフティ共済)がスタートいたしました。
この制度は、中小企業者が取引先の倒産等により売掛債権が回収困難となった場合に中小機構から貸付を受けて連鎖倒産を防止するための積立制度です。現在、約48万件の企業が当共済制度に加入しています。
過去、1990年代のバブル経済の崩壊、2000年代の金融危機、リーマンショック時にはその役割を果たしてきました。そして、今まさに新型コロナウィルス感染症による経済危機に対し、経営セーフティ共済の活用の機会が訪れています。
2.資金繰りに窮する中小企業の救世主としての共済
中小企業は、得意先に対し、現金決済ではなく、信用取引で販売している場合がほとんどです。売上即入金の場合は問題ありませんが、信用取引の場合には、貸倒れのリスクが存在します。
得意先の複数が連鎖倒産した場合、売上の入金がされず資金繰りに窮することが想定されます。この共済制度では、倒産した会社の売掛債権の貸倒れ額または積立済み掛金の10倍(上限8,000万円)のいずれか少ない金額まで借入できます。
また、借入することに抵抗感がある方には、納付した掛金総額の最大95%の範囲内にて、年利0.9%で借入できます。
さらに、自己都合の解約であっても、掛金を12か月以上納めていれば掛金総額の8割以上が戻り、掛金を40か月以上納付した場合、任意解約すると解約返戻金が100%戻り、減収を補填できます。
3.有事の際の備えとしての共済
今回の新型コロナウィルスの例でも明らかなように、日本経済の危機は中小企業自身ではコントロールできないものです。自身でコントロールできない、そして自助努力ではどうしようもないのについては、共助及び公助の力を借り、平時からの備えが重要です。リスク管理とは、緊急ではありませんが重要なものです。
掛金月額は5,000円~20万円まで自由に選べ、増額・減額できます。また確定申告の際、掛金を損金(法人の場合)、または必要経費(個人事業主の場合)に算入できます。
過去の経済危機の克服に学び、中小企業の状況を把握している顧問税理士などのアドバイスを受けつつ、この難局を乗り切りたいものです。
税理士 木村 岳二
1994年中央大学商卒。2005年税理士登録。同年よりTKC全国会入会。現在、TKC北陸会三共済等委員長。税理士法人木村経営ブレーン代表社員税理士。
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