2023/02/26
インボイス制度とは(前半) 2023
M社の営業マン向けのインボイス制度研修講師の機会を頂き、インボイス制度について話すこととなった。
いかに消費税制度について平易に話すかが試されており、まさに「頼まれごとは試されごと」の講師機会となる。
はじめに~消費税の導入
消費税法が施行され、3%の消費税制度が導入されたのは1989年(平成元年)4月。
竹下内閣の時であった。
桜舞う季節。
小学生がお母さんから貰った100円を握りしめ近所の文房具店へ走る。
どうしても入手したい流行りの可愛いペンがあるからだ。
ところが、買えずに泣いて帰る。お母さんがどうして泣いているのと問う。
100円で買えなかった。あと3円足りないって。どうしてなの?
消費税が導入されて、こういうエピソードが続出した。
後ろに並んでいたおじさんが3円くれた美談もある。
消費税のない時代から今。
国家税収の中でも所得税よりも消費税の方が多い今。
直接税よりも間接税が多い時代となった今、なぜインボイス制度導入なのだろうか。
財務省最後の仕上げと気合が透けて見える。
さきほどの小学生が足りなかった3円。
負担するのが小学生で納めるのが文房具屋さん。
負担する人と納税者が違うので間接税という。
納税者である文房具店が消費税を納めていない現状があるとすれば、消費税制度は機能していないこととなる。
この消費税を納税していない事業者を免税事業者(導入当初の免税事業者の課税売上高は3,000万円以下)という。
免税事業者が相当数いて、これを「消費税の益税問題」という。
財務省は、本来納めるべきはずの消費税を納めていないのでその分利益になっている免税事業者の現状を注視してきた。
インボイス制度導入の文字通り「導火線」に火をつけた正体だ。
1.インボイス制度選択の岐路~選好の訳
国家は、一度も消費税を納めていない免税事業者に対し、「インボイス制度」を機に自ら消費税を納めよと突き付けている。
あくまでも、自主的に課税選択するように届出が必要となる。(令和5年1月末時点で約250万件の事業者登録申請あり)
この届出が今回の主役である免税事業者の混乱を招いた。
敢えて、消費税課税事業者を選択するのは、お客様(とくに事業者)から自らのサービスや商品を選んで頂くためだ。
今、私の眼前に営業マンの方がいるので、タクシー代の精算を経理に提出する場面をイメージして頂こう。
インボイス制度導入は今年の10月1日。
秋も深まる朝晩冷える折、会食終わりの22時頃、ほろ酔いで金沢駅周辺の居酒屋からタクシーに乗ったとしよう。
個人タクシーに乗った時、こう思う。
「あっ、個人タクシーか。ペイペイ使えるかな。富士タクシーなど大手会社はキャッシュレス決済が豊富だ。現金あったかな」と小銭入れに千円札数枚を確認し、暫し眠りにつく。
自宅につき、現金を払い(やはりペイペイなかった)、領収を頂き、そのまま鞄に入れ、翌日出社する。
領収書を添付して、経理に提出すると、インボイス対応していないと指摘される。
そういえば、3月初旬頃研修受けたけど、ツマラナイ内容で講師もイマイチだったから覚えていない。(此処自虐を入れてみる)
経理によれば、領収書の金額は2,200円。
10%の200円が消費税分だ。
この200円が消費税を納める時、計算上控除できないという。
より正確に言えば、制度開始から3年間は8割を控除できるので、160円消費税の計算上引ける。
仕訳(タクシーが課税事業者の場合)
(通信交通費)2,000 (現金) 2,200
(仮払消費税) 200
仕訳(タクシーが免税事業者の場合)
(通信交通費)2,040 (現金) 2,200
(仮払消費税) 160 ← 200×80%
経理は、精算の時に言うだろう。
面倒だから、インボイス対応しているタクシー会社に乗れと。
蛇足ながら、どこで見極めるかというと、インボイス番号が明記しているか否か。
タクシーから降りる際、酔っていても、キャッシュレス対応と併せて、先ずは領収書に番号が記載されているか確認しよう。
この領収書エピソードが語るように、インボイス対応していない事業者(今回の例はタクシー会社)はお客様から選ばれない。
まさに、インボイス対応は、事業の生死の分近点になります。
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