2015/04/15
「改正税理士法の一部施行と税制改正の要点チェック」<286>
「改正税理士法の一部施行と税制改正の要点チェック」<286>
(4/15)
( )内は私のコメントです。
・税理士法が4月1日に一部施行された。
平成13年以来の改正で、平成26年度税制改正に伴うもの。
懲戒処分関連では、「税理士業務の停止」が「1年以内」から「2年以内」に延長された。
また、税理士会の会費を滞納した会員税理士に対して戒告処分できるようになった。
さらに、税理士法37条「信用失墜行為の禁止」の2として「非税理士に対する名義貸しの禁止」が設けられ、「ハンコ貸し」をした税理士に対する処分が明確化された。
(平成19年12月~平成27年1月までの7年間、国税審議会の委員を務めさせていただいたが、その間、この「名義貸し行為」が税理士業界の発展を阻害していることを強調してきた甲斐があった。
平成25会計年度では懲戒処分等件数は50件に達している。)
事務所の所在地変更申請がない税理士に対して税理士会が「必要な指導・助言」をできる規定も設けられた。
租税教育の取り組みに関しては、税理士会の会則の記載事項にすべき対象に「租税教育その他知識の普及及び啓発のための活動に関する規定」が加えられました。
また、他の税理士・税理士法人の補助者として常時税理士業務に従事する「補助税理士」の名称は「所属税理士」に変更。
所長税理士や税理士法人の承諾を得て、他人の求めに応じ自ら税理士業務の委嘱を受けることができるようになった。
(就業規則との関連をどうするかが問題)。
・研修受講と税務支援の義務化。
・税理士試験の受験資格要件も見直し。
職歴要件を「3年以上」から「2年以上」に引き下げた。
(税理士試験受験者や税理士登録者の減少傾向に配慮?)
このほか、今後は税理士証票を定期的に交換することが求められる。
報酬がある公職に就いた場合の税理士業務の停止規定に例外も設けられた。
なお、公認会計士に対する税理士資格の自動付与制度の見直しは、2年後の平成29年4月以降の適用だ。
(税法に関する研修は国税審議会の指定する研修になる。)
・税制改正の要点チェック
1、税務調査
(1)、適用済み
・実地調査があった場合、再調査は「新たに得られた情報」に限り、実地調査の問題点が蒸し返されることは無い。
実地調査以外の調査には、「お尋ね文書」や、呼び出しによる「机上調査」なども含まれるとみられる。
(今後、当局による簡易な接触の増加が予想される。)
(2)、平成27年7月1日~適用
・昨年、税務調査の事前通知は納税者の同意があれば税務代理人にのみすれば良いこととになった。
さらに複数の税務代理人がいる場合でも、納税者の指定があれば代表1人にのみ通知すれば調査に移行できる。
(3)、平成28年1月1日~適用
・国内財産債務調書および国外の財産債務調書
(これまでの「財産債務明細書」に代わって創設。)
提出義務者は所得2千万円超かつ、財産の価額が3億円以上か金融資産の価額が1億円以上の人。
過小申告があった時に、当該財産を調書に記載あれば加算税を5%軽減し、未記載や未提出の時は5%加算される。
(相続税申告に備えて所得税確定申告の調書は要注意)
(4)、平成30年1月1日~適用
生命保険などの調書の提出義務化。
生命保険などの契約者が死亡によって変更された時に、変更内容やその時点での解約返戻金相当額を記載した調書提出を義務付ける。
(ガラス張りになる。)
2、納税環境
(1)、平成27年9月30日~適用
・税務書類のスキャナ保存。
税務署長の事前申請も不要となり、かつ対象書類の要件を撤廃し、すべての書類をスキャナ保存で代用できる。
(2)、平成29年1月1日~適用
電子申告をする際にスキャナしたイメージデータによる提出もみとめられる。
今のような紙資料の別送は不要になる。
(今から準備を。)
3、法人税
(1)、適用済み
・法人実効税率の引き下げ。
企業の「稼ぐ力」を強化し経済成長を促進されるため。
現行 34.62%⇒今年度 32.11%…△2.51%
(有り難い改正、1,000万円で251,000円)
資本金等が1億円以下の中小企業は年800万円以下の所得に、法人税率軽減 15% が2年間延長。
・欠損金の繰越控除制度の縮減。
資本金等が1億円超の法人。
繰越控除する事業年度の所得金額の80%までが控除限度
⇒
今年4月1日から平成28年3月末までに開始する事業年度から 65% に。
また、繰越期間が9年⇒10年 に延長。
・受取配当金の益金不算入制度の見直し。
関連会社の持ち株比率により異なる。
3分の1超…全額非課税
3分の1以下…50%
5%以下…80%課税
・外形標準課税(法人事業税)の拡大。
資本金1億円超の法人で総給与額が前年度より3%以上賃上げ出来ないと税率が 0.48%⇒0.72%
・研究開発税制の見直し。
オープンイノベーション(OI)型を大幅拡充。
繰越控除は廃止。
・4月1日施行の地域再生法により、地方進出企業やすでにある地方拠点を強化する企業に税優遇する。
税優遇は特別償却、税額控除、地方進出企業には給与が一定以上増加していると雇用増加1人あたり50万円、大都市から地方に移転した場合は1人あたり80万円の税額控除できる。
(企業の戦略を注視しよう)
(2)、平成28年4月1日~適用。
・所得拡大促進税制の拡充。
中小企業は増加率を5%を3%に引き下げる。
大企業も4%に。
4、所得税
(1)、適用済み
・「ふるさと納税」の拡充。
寄付に対する税額控除の上限を、個人住民税所得割の1割から2割に引き上げた。
また、給与所得者には寄付先が5つ以下なら寄付先の自治体が納税者に代わって税額控除の手続きを行う「ふるさと納税ワンストップ制度」が創設。
・特定資産の買換特例(9号)の見直し。
事業用の買換えの新たに取得する土地建物が東京の場合は70%に、都市圏は75%になる。
・住宅ローン減税、すまい給付金の延長。
ローンの1%を10年間にわたり。平成31年6月まで。
(2)、平成27年7月1日~適用。
・出国時課税制度の創設。
金融資産を1億円持つ人を対象に、出国する段階で20%を課税。
5年の納税猶予あり。
(3)、平成28年1月1日~適用。
・「NISA」の拡充。
平成26年に非課税枠100万円でスタートした少額非課税制度が120万円に拡大。
また年80万円を限度に親や祖父母が20歳未満の子どもの名義で投資すれば配当金や売却益は非課税。
ただし、18歳までは引き出せない。
引き出すと過去にさかのぼり課税。
5、相続税・贈与税
(1)、相続税…平成27年1月1日~適用。
・基礎控除額の引き下げ。
3000万円+(600万円×法定相続人の数)
・税率の引き上げ。
2億円を超えると45%~55%に。
・税額控除
未成年控除…20歳までの1年につき10万円。
障害者控除…10(20)万円。
小規模宅地(50%~80%減額)…居住用宅地 330平米、居住用と事業用の宅地を選択 730平米まで適用可能。
(2)、贈与税…平成27年1月1日~適用。
・相続時精算課税。
贈与者60歳以上、受贈者は20歳以上で推定相続人に加え孫も。
・税率…10%~55%課税の税率構造を変更し、300万円~4500万円の価格帯を5%~10%減税した。
(3)、贈与税…平成27年4月1日~適用。
・事業承継税制の範囲拡大。
先代の生存中に二代目が三代目に株式の再贈与を行った場合に、先代から二代目への猶予税額は免除。
・結婚・出産・子育て資金の一括贈与の非課税特例の創設。
父母や祖父母が、20歳以上50歳未満の子や孫に、信託して一人1,000万円(結婚費用は300万円)。
・住宅取得等資金贈与の非課税特例は平成31年6月まで延長。(300万円~3,000万円)
・教育資金の一括贈与の非課税特例(信託して1,500万円を限度)を平成31年3月まで延長し、通学定期券代と留学渡航費等を追加。
6、消費税
10%課税を平成29年4月1日より施行。
7、特定空き家への固定資産税特例の撤廃。
平成28年度分から、自治体に危険と見なされた空き家は固定資産税が6倍に跳ね上がる。
(空き家を放置している不動産オーナーは要注意。)
(写真…4/6、鞍月パーク)
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