2016/10/25
「第20回全国大学会計人会サミット」<341>
15日に東京富士大学会計人会の主催により東京富士大学二上講堂で開催された。
私も実行副委員長として参画した。
私が東京富士大学の前身である富士短期大学を卒業したのは38年前の昭和53年3月。
勤務していた会社を32歳で退社し松任市(現白山市)に住宅兼税理士事務所を建て開業したのが昭和50年6月1日。
顧問先も少なく時間があったので、翌年に公認会計士の受験資格を得るために入学した。
しかし、卒業時には仕事量も少しづつ増え生活費のこともあったので、先輩の助言をきっかけに公認会計士の受験を断念し税理士業務に専念することになった。
東京富士大学は1943年創立、73年の歴史があり、奇しくも私の年齢と同じである。
簿記・会計教育に強く、500名を超える税理士を輩出している。
全国大学会計人サミットには全国の30大学会計人会(全国51会計人会のうち)から150名が参加した。
岩下忠吾実行委員長、若狭茂雄東京富士大学会計人会会長をはじめ31名の実行委員が7か月間準備を重ね、サミットは盛況だった。
ご来賓には神津日本税理士会連合会会長、鈴木日本公認会計士協会副会長、西村東京税理士会会長、浅井日本公認会計士協会東京会会長、石丸北海道税理士会会長、松原九州北部税理士会会長、小島東京地方税理士会会長、二上東京富士大学理事長、長谷川東京富士大学学長など22名。
ご挨拶の中で公認会計士業界も業務環境が厳しく、経営助言や国際問題、ITの分野などに拡大しているとの話があった。
「プログラム」
・サミット会議…基調講演「歪みのない消費税を」:岩下実行委員長
・東京富士大学会計人会によるパネルディスカッション…コーディネーター:岩下実行委員長、パネラー:実行委員5名の先生。
「歪みのない消費税を」の論点。
・全事業者822万(営利法人、公益法人、学校法人、社会福祉法人、個人の事業所得者と不動産所得者)のうち約36%のみが消費税の納税義務者であるという事実をどう考えるか、これについてどう対処すべきか、そのためにはどのような方法があるか。
・基準期間の課税売上高を基準とすることの問題点。
・税法が2年間消費税の納税を免除していることの矛盾。
・2年ごとの開業・設立と廃業・解散による消費税の回避を税制が認めていることの矛盾。
・最大の矛盾は、順次事業者間で転嫁されることを予定している消費税のスキームを破壊していること。
・インボイス導入により免税事業者が経済取引から排除され、経済の基盤と成長の阻害要因となること。
・今般の消費税引き上げ延期により、軽減税率の執行も延期されることになったが、平成28年1月1日からスタートしたマイナンバー制度も活用しつつ消費税の逆進性の緩和対策を再検討する必要があるのではないか。
・非課税からゼロ税率課税への改正を。
現行消費税において非課税取引が13項目設けられている。
このうち国民の生活、健康、教育に密接に関連しているものとして、療養、医療、住宅家賃、社会福祉、身体障害者用物品、教科書にかかる資産の譲渡が非課税となっている。
非課税となっているため、これらの対価に仕入れにかかる消費税が含まれ国民の負担になっている。
医療機関の控除対象外消費税(損税)は日本医業経営コンサルタント協会の調査では、平成20年度で医科診療所は平均200万円、病院では平均2,200万円となっている。
・一般事業者における金融収益の課税売上割合からの除外。
すべての事業者は金融機関に資金を預貯金として預託しており、金融収益として預金利子を収受している。
この預金利子の額が存在することにより、課税売上高5億円を超える事業者は仕入税額控除について個別対応方式を選択している場合、課税仕入れを常に区分することが必要となり、事務手続き上大きな負担となっている。
この事務負担を含めた改革が必要ではないか。
・簡易課税事業者の投資即時控除。
消費税の特徴の一つに「投資即時控除」がある。
つまり、事業者の課税仕入れは、その目的、種類、金額、課税制度に関わりなく課税仕入れを行った課税期間において控除するという特徴を持っている。
しかし、現行制度を維持することを前提として、簡易課税制度の選択事業者の設備投資にかかる仕入税額控除の見直しが必要であることを提言したい。
現行のみなし仕入率と乖離していることは明らかだが、公表された実額の仕入率が損益計算をベースとして算定されていることから見ても、消費税法によるみなし仕入率には資産にかかる課税仕入れが含まれていないと考えられる。
「結 論」
租税は公平、中立(効率)、簡素を基本としているが、消費税に関しては…
1、逆進性の問題
2、帳簿方式の問題
3、簡易課税の益税の問題
4、消費税の届出書が複雑
これからは税率10%、軽減税率、インボイスとますます複雑になろうとしている。
今こそ、消費税制の歪みを是正すべきである。
懇親会は二上講堂の4階に移動し和気あいあいの中で、アトラクションはモンゴルの馬頭琴が奏でられた。
中締めの挨拶で、「私は”武士の家計簿”でお馴染みの金沢から参りました。昔は藩の財政でそろばん侍が活躍していましたが、今は大学会計人会が業界の中心になって国家に貢献いたしましょう。今日のサミットで提起された法改正で消費税の課税事業者が500万増えることにより、税理士の業務が増えて若者の税理士受験離れが改善されることを期待しています。」と訴え、三三七拍子で締めくくった。
今回のサミットで多くの出逢いがあった。
TKC中央研修所の役員でご一緒した江種康人先生も東京富士大学出身で30数年ぶりにお会いした。
江種先生から、石川県出身の哲学者である西田幾多郎の「わが心深き底あり、喜も憂の波もとどかじと思う」という短歌を教えていただいた。
西田は絶望の極にあって、その心の底深くに広がる魂の開けを、「喜びも憂いの波もとどかない」静謐な永遠の世界を感得し、絶望を突き抜け「あかあかと燃える」純粋生命を体得し哲学に表現したものだ。
今回初めて会った中国大連出身の王剣鋒さんは日本の税理士の資格を取得し、奥さんは日本人で、日本企業の大連貿易に関する税務を専門にされている。
私が以前に会った大連市の夏市長のことを話したら覚えていた。
全国大学会計人会サミットの発起人代表である関本和幸先生は体調がすぐれずご欠席され、お会いできなかったのは残念だった。
来年の第21回サミットは成蹊大学の担当となった。
東京富士大学の存在をアピールできた良い機会でありました。
写真…東京富士大学会計人会が参加者にお配りしたもの。
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