2017/10/25
「芸術の秋を堪能、三題」<377>
一、18日…作家・五木寛之氏の「今を生きる力」と題した講演を聞いた。
金沢経済同友会の創立60周年を記念した講演会。
五木氏(81歳)は人生後半の生き方について、健康的に笑うだけではなく、悲しい物思いを意味する「暗愁(あんしゅう)」の感情を肯定的に持つことが大切とし「大きなため息をついて心が軽くなることがある。深く悲しみ、泣くことを忘れてはいけない。」と述べた。
五木氏は人生が青春、朱夏、白秋、玄冬という四つの年代に分けられると。
これから迎える超高齢社会では、人生後半にあたる白秋や、幽玄の境地に通じる玄冬を前向きにとらえる必要があると指摘。
その上で、「年を取ると、人間不信と自己嫌悪に陥りがちだ。その谷底から抜け出すためにも、ちゃんと笑い、ちゃんと愁いて、後半半生にチャレンジしてほしい」と述べた。
後日いただいた五木寛之氏と本田哲郎氏の共著「聖書と歎異抄(たんにしょう)」を読ませていただいた。
お二人の対談形式の著書である。
本田哲郎氏の「むすび」に書かれていたのは…
五木寛之さんが大切にしておられる「他力」とは何かが、すこし見えてきたように思う。
人任せ、成り行き任せということではないと漠然とながら承知していた。
お話しを聞いているうちに、共に歩んでいてくださる阿弥陀の力に信頼してあゆみを起こすということだと。
私(本田氏のこと)は納得した。
「聖書」のいう「ピスティス(信頼してあゆみをおこす=信仰)」に限りなく近いものである。
イエス・キリストいわく、「丈夫な人には医者はいらないが、具合の悪い人には必要なのだ。
じつに、わたしが来たのは、正統な人を招くためではなく、道をふみはずした者(罪人)を招くためである。」と。
浄土真宗の親鸞・法然とキリストが不思議に響きあい、共振することに感銘したと。
二、19日…昨年につづいて祐門会主催の「北陸能面展」を石川四高記念文化交流館で鑑賞する。
全28作品のうち知人の松平敦實氏の作品「大飛出」と森榮一氏の作品「若女」が出展されていた。
「大飛出(おおとびで)」は、怨霊となった菅原道真公の怒りの相貌を表したもの、大きく見開いた眼と口は迫力に満ちています。彩色は金泥で仕上げられ、金具の眼は鬼神性を象徴しています。
「若女(わかおんな)」は主に観世流で使用されます。上品で初々しい雰囲気が見られる女面です。
お二人とも、私の素人目ながらすばらしい出来だと思う。
私と同年齢の知人で分林保弘氏がいる。
「花の昭和18年組」と言い合う仲で、TKC会長の飯塚真玄氏も同期である。
分林氏とは昨年3月にハワイでゴルフをラウンドしたことがある。
1943年京都生まれ。
父は観世流能楽師、母は裏千家茶道教授。3歳で能の初舞台を踏む。
1991年4月に日本M&Aセンターを設立し、16後の2007年12月に東証一部上場を果たす。
分林氏は祖父の代から続く能楽師一家であり、戦士の逸品は「能面」だという。
三、21日…「芸術祭十月大歌舞伎」を鑑賞する。
日本税理士会連合会の長年にわたる同志である日税連会長の神津信一氏(東京都)、相談役の熊谷眞人氏(仙台市)、清水武信氏(狭山市)と私夫婦の八名で会う。
本年は神津信一先生が幹事で11年目で初めて夫婦同伴の企画をしていただき有り難かった。
銀座の「天ぷらの天一」で会食。
フランク・シナトラ、ロックフェラー、キッシンジャー、クリントン、ゴルバチョフ、シラク、アナンなどの世界的な要人が訪れている店だ。
その後、銀座の歌舞伎座で
「孤城落日(滅びゆく豊臣家の一族と淀の方の狂気を描いた名作)」
「唐人話(長崎を舞台に描く朝鮮視察団をめぐる事件)」
「秋の色種(秋の草花が詞章に盛り込まれる長唄の名曲)」を鑑賞する。
1等席で坂東玉三郎、中村七之助、中村鴈治郎ほかの名演技を四時間にわたり堪能した。
あたかも、21日は衆議院選挙の投票前日で、しかも台風21号が日本に上陸していた日だった。
会食のとき、12年前の平成17年12月、私の藍綬褒章受章祝賀会が未曾有の寒波に見舞われ、それ以来私のことを「嵐を呼ぶ男」と呼ばれることになったエピソードが話題に出て当時を懐かしんだ。
写真…日日草(10/25、鞍月セントラルパーク)
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