2022/01/25
「生きるということ」<530>
今年の大学入学共通テスト問題を見ていたら、国語の第2問に黒井千次「庭の男」が出題されていて目についた。
その文章は・・・
「私」は会社勤めを終え、自宅で過ごすことが多くなっている。
隣家の庭に息子のためのプレハブ小屋が建ち、そこに立てかけられた看板に描かれた男が、「私」の自宅のダイニングキッチンから見える。
その存在が徐々に気になりはじめた「 私」は、看板のことを妻に相談するなかで、自分が案山子(かかし)をどけてくれと頼んでいる雀のようだと感じていた。
(以下略)
立看板をめぐる「私」と隣家の息子の心理描写が繊細に書かれている。
小説家の黒井千次は1932年生まれの文化功労者。
大企業の組織を見つめ、労働者の人間疎外を主題とした作品を多数執筆、自叙伝的な青春小説「春の道標」でも好評を得ている。
黒井千次に興味が湧き、
「庭の男」の出版は見あたらなかったが、2013年作品「生きるということ」、2012年「老いのつぶやき」、2014年「老いの味わい」を取り寄せ読んだ。
1年後に傘寿を迎える身で、老いを考える。
「生きるということ」の章は・・・
第一章 時の流れに生きる
第二章 人生の節目に生きる
第三章 日常に生きる
第四章 言葉とともに生きる
第五章 時代とともに生きる
第六章 老いとともに生きる
第七章 明日へ向かって生きる
このうち第六章の中、「死の教育」の一節を要約すると。
いかにして生命の尊さを教えればよいかといった手立てについて充分に論じられていない。
人間にとって、生きるとは日常であり、これを正確に自覚することは容易ではない。
健康のありがたさは病気になってみなければわからぬ。
生より死について真摯な考察を深めることが大切。
死は高齢者の占有物ではない。
生と同じく、すべての人間がひとしく抱えているものだ。
死を考察すれば、生命の尊厳が分かる。
人生の先には何があるのか。
わからないからこそ、歩き出すことに価値がある。
写真・・・2021.12.9~12、「2020ドバイ国際博覧会」の日本館で日本棋院が囲碁の普及イベントを開催。Tシャツ「The World of GO碁」を掲げるドバイ万博囲碁出展実行委員会の佃優子事務局長。
y.ringo さま
コメントありがとうございます。
ロシアのウクライナ侵攻に憤っています。
人類は戦争を繰り返して、反省しても懲りない動物です。