2022/06/15
「新電力の課題」<544>
6/6のNHKニュース解説「時論公論」。
電気料金の引き下げを目指して進めてきた電力の小売自由化が壁にぶつかっている。
ロシアのウクライナ侵攻で天然ガスが高騰し、経営が悪化する小売業者が増えている。
かつて、電力は大手電力会社が発電・送配電・小売のすべてを担っていて、電気料金は燃料や送配電のコストを積み上げて算出していたため、コストダウンの意識が低く料金が下がりにくくなっていた。
1990年後半以降、三段階の制度改革を図ってきた。
発電には大工場など自家発電の独立発電事業者、小売には新規会社が参入し、大手電力会社と新規事業者の間で競争を生み出し料金の引き下げをねらうためだ。
問題になっているのが小売の「新電力」と呼ばれている新規参入会社だ。
2021年4月時点で706社が登録されていたが、2022年3月までの一年間で14社が倒産、17社が廃業撤退し2016年の小売自由化以来、最も多くなった。
原因は新電力の構造にある。
新電力は自ら発電機能を持たず、大手電力会社や独立発電事業者との相対契約または卸電力取引所から電気を調達してきた。
この度、天然ガスが10倍にも値上がりし、2022年3月には平均で26円/kWhと昨年の4倍以上になり、その後も、高止まり状態である。
そのため、安い料金を維持出来ず撤退や経営破綻に追い込まれているのである。
新電力の小売市場のシェアは2~3割程度。
事業者の撤退で15万7000件の契約者が他の事業者への切り替えを迫られるケースも。
大手電力会社に契約切り替えをする動きがあるが、大手電力会社は新規受け付けを停止している。
理由は追加の電気調達が必要となるが、自前の設備は発電量ギリギリで卸電力取引所から調整すると採算が見込まれない。
顧客は路頭に迷うが、制度上では送配電事業者が供給義務を負うが、新電力の経営悪化は顧客を不安定な状況においている。
政府は4月に新電力に対し、信用保証協会が債務保証する融資制度を開始した。
しかし、より求められるのは新電力の経営と電力供給の安定だ。
小売自由化制度開始前には
、新電力にも発電機能を義務づけるべきとの議論があったが新規参入をしやすくするため実現できなかったことが、高い電気を買わざるをえなくなり経営をぜい弱にしている要因だ。
経済産業省では新電力の経営体力の調査を開始し、新規参入事業者へは電気の安定供給に厳格な判断が求められるようだ。
課題として
1、相対取引で安定した価格で一定量調達義務づけ
2、価格の安い太陽光エネルギーを蓄電して夜間に供給し、市場価格の変動緩和を
資源を持たない日本に突き付けられた課題、適切な制度の見直しが求められる。
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