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やさしい税務会計

勤続年数1年未満の従業員に退職金を受給する場合の退職所得控除額

[相談]

私は衣料品小売店を運営する会社を経営しています。
昨年来の新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、当社の売上高はコロナ禍前の30%程度にまで落ち込んでいます。
従業員の雇用は国の雇用調整助成金を受給することでなんとか守ってきましたが、店舗家賃等、人件費以外の経費負担が非常に重く、また、今年に入り取引銀行から新規の融資を断られてしまったため、このままだとあと数ヶ月で資金ショートを起こしかねない状況となってしまいました。
このため、やむを得ない措置として、中途採用した従業員(勤続年数1年未満)に対して退職を勧奨したところ、退職金30万円を支給することを条件に、退職の合意を得ることができました。
そこで確認したいのですが、勤続年数が1年未満の従業員に対して支給する退職金についても、所得税法上の退職所得控除は適用されるのでしょうか。

 

[回答]

ご相談の場合も、退職所得控除は適用されます。なお、退職所得控除額は80万円です。

 

[解説]

1.退職金からの所得税の源泉徴収手続きの概要

所得税法上、役員や従業員に対して退職金を支払うときには、原則として、所得税(及び復興特別所得税)を源泉徴収して、徴収した月の翌月の10日までに国に納めなければならないことと定められています。

その源泉徴収税額は、退職者から「退職所得の受給に関する申告書」の提出を受けていない場合には、退職金の支給額に一律で20.42%の税率を乗じて計算した金額となります。

一方で、その申告書の提出を受けている場合には、勤続年数に応じた「退職所得控除額」を退職金支給額から控除したうえで、源泉徴収税額を計算することとなります。

 

2.退職所得控除額を計算する場合における勤続年数の計算方法

所得税法上、上記1.の退職所得控除額を計算する場合の勤続年数の計算については、1年未満の端数を生じたときは、これを1年として勤続年数を計算すると定められています。

このため、今回のご相談の場合は勤続年数を1年として、退職所得控除額を計算することとなります。

勤続年数1年の場合の退職所得控除額は80万円(※)ですので、今回のご相談の場合は、退職者から上記1.の退職所得の受給に関する申告書の提出を受けることで、退職所得の金額は0円となります。

なお、退職金を支給した従業員に対しては、会社から「退職所得の源泉徴収票・特別徴収票」を発行することが必要ですので、この点にもご留意ください(源泉徴収税額が0円であっても発行することが必要です)。

(※)原則的には、40万円に勤続年数を乗じて計算した金額が退職所得控除額となりますが、計算した金額が80万円に満たない場合には、80万円とすると定められています。

 

■退職所得控除額の計算の表

勤続年数(=A) 退職所得控除額
20年以下 40万円×A
(80万円に満たない場合には、80万円)
20年超 800万円+70万円×(A-20年)

 

 

[参考]
所法30、199、201、203、226、所令69など

 

 

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
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